「酔っぱらったような感覚」「リラックス効果があって不安感が減る」――。
医療機関で治療などの前に行われることがある「笑気(しょうき)麻酔」。その効果について取材する医師や歯科医師からはこんな言葉が聞かれますが、果たして本当でしょうか。
医療ライターのショウブ(@freemediwriter)が実際に体験してみました。
- 笑気麻酔とはどんな麻酔か
- どんなときに行われるか
- 値段と副作用の有無
- 体験した上での感想
こういったことを書いていこうと思うので、「笑気麻酔をすることもできるけどどうする?」などと医療機関で聞かれて興味を覚えた人は参考にしてみてください。
結論から言うと、「すごく効く人もいるし、わたしのように効果が高くない人もいる」というのが実際のところのようです。
笑気麻酔とは
過去に取材した医療関係者や辞書サイト、歯科医院のホームページによると、笑気麻酔とは、「笑気」と呼ばれる気体を吸うことで不安感や恐怖心が和らいだり、気持ちが落ち着いたりする効果が見込めるもの。
「笑気」は「亜酸化窒素」(正式名称は一酸化二窒素)という気体で、医療に使う際は酸素を混ぜて濃度を調整するそうです。
この気体を吸うと顔が引きつれて笑ったように見えることから「笑気」と呼ばれるようになったといいます。
脱法ドラッグに使われた歴史も
現代用語辞典「知恵蔵」によると、亜酸化窒素を吸うと多幸感を得られることから、世界的には発見された18世紀当初から麻薬のように使われてきたといいます。
「近年でもいわゆる脱法ドラッグとしてヨーロッパを中心に乱用され、酸欠による死者も出ている」(2015年現在)。
日本ではこういった海外の状況を鑑みて、同年に厚生労働省が「シバガス(SIVAGUS)」という商品名の笑気ガスを無許可で販売する業者への指導・取り締まりを強化することを発表したそう。
脱法ドラッグとして使われてきた歴史があることは日本ではあまり聞かないのではないでしょうか。
笑気麻酔は美容医療でも行われる
日本では歯科や産婦人科、眼科などにおいて検査や治療の前に行われることがあるようですが、美容医療の世界でも施術の前の選択肢に挙げられます。
鎮静・鎮痛効果を狙って脱毛やボトックス注射などの前に行われているんですね。
笑気麻酔の値段は?
わたしが今回、笑気麻酔を体験したのは湘南美容クリニックで行っているヒゲ脱毛の前です。
同院における笑気麻酔の値段は2020年10月現在、1回2200円(税込み)。
美容医療を提供するほかの医療機関では、「品川美容外科」が2710円(非会員、税別)、過去に取材したこともある東京中央美容外科が2750円(税込み)で提供。
歯科医院で行う保険内の治療では笑気麻酔も保険が適用されるため、「3割負担で500~1500円」「1000円前後」「30分で600円前後、1時間で1000円程度」と複数の歯科医院のサイトに掲載されています。
美容医療は自費なので、笑気麻酔も自費になり、結果、保険内の相場よりも少し高くなるようですね。
笑気麻酔の副作用
過去の取材で笑気麻酔の危険性について言及した人はいませんでしたが、改めて湘南美容クリニックの事務や看護師の方に聞いてみても、「あまり心配する必要はない」とのことでした。
吐き気を催すなどの可能性はあるものの、内臓など体への負担は「ほぼない」と言われているそうで、総じて安全性の高い麻酔だといいます。
すぐに効果が表れる一方、抜けやすい(血中から成分がすぐに排出される)ことも特徴であるらしく、施術後はクリニックで休む必要はなく、すぐに帰れるそうです。
笑気麻酔の流れ
- 鼻に小さい管を入れる
- 管から出る気体を鼻から吸い、少し息を止めて口から吐き出す
- これを繰り返すと効果が出る
- 終了後に酸素を吸入し、体を元の状態に戻す
笑気麻酔の流れは上の通り。
ヒゲ脱毛の施術を行うときはアイマスクを装着しているので、視覚的にどんなふうに笑気が放出されているのか確認できませんでしたが、施術スペースに入ったとき、ベッドの近くにボンベが数本置かれていたのでここからガスが出ていたのでしょう。
鼻の両穴に細いチューブが入れられて、そこから「シュー」という音とともに気体が鼻腔を通っていきます。
「チューブを挿入される」といっても管は鼻の穴の浅い部分で固定されていて、そこから深くまで入れられるわけではないので、「鼻腔と擦れるなどして痛みが生まれる」といったことはありません。
ただ、送られる気体を鼻から吸い、その後に少し息を止め、口から吐き出す――を繰り返すだけです。
笑気麻酔の効果
さて、笑気麻酔の効果はどうだったのでしょうか。
「少しあった気がするけど、高くはなかった」
これがわたしの率直な感想です。
施術前に5分ほど笑気を吸って吐いてを繰り返し、その後に施術が始まりました。
今回の施術部位である鼻下・あご・あご下のうち、鼻下にレーザーを照射する際は管を外す必要がありますが、あごとあご下についてはその必要がなく、笑気を吸いながらレーザーを照射されました。
笑気を吸っていた時間としてはトータル15分ほどでしょうか。
- 酔っぱらったような感覚はない
- 気持ちが良くなる感覚もない
- 話すのが少し億劫になる
- 痛みの感覚が鈍った気がする
わたしの体感です。
まず、「酔っぱらったような感じでふわふわと気持ちが良くなる」という、よく挙げられる感覚はわたしには訪れませんでした。
ぼんやりして意識レベルが落ちる、といったこともなかったのですが、施術中に看護師の方と話すのが億劫にはなったので、それが鎮静効果だったのかもしれません。
一方、痛みの感覚は少し鈍ったように思います。
せっかく笑気麻酔をするわけなので、看護師の方と相談してレーザーの出力を一段階上げてもらったのですが、ヒゲの少ない部分はいつもより痛みが弱まった気がしましたし、また、鼻の真下などヒゲが残っていて痛みが強い部分も過去と同程度かそれよりもやや弱く感じました。
「出力を上げているにも関わらず痛みが同じか少し弱いくらい」ということは、鎮痛効果が表れていた可能性があります。
まあ、痛いことには変わりないのですが(笑い)。
効果がわかりづらかった理由
- そもそも施術への恐怖心や不安感が小さい
- 出力を上げてもらったので痛みの程度を比較できなかった
今回、笑気麻酔の効果がわかりづらかった理由には上の2つが挙げられそうです。
わたしは既にヒゲ脱毛の施術を何度も受けていて、恐怖感や不安感をさほど感じなくなっているので、リラックス効果の有無やその程度を想像しづらかったんですよね。
緊張状態だったらまた違っていたのかもしれません。
加えて、レーザーの出力を上げてもらったことも結果的に効果のほどをわかりにくくしたように思います。
過去と同じ出力であれば当時の痛みの程度と比較でき、想像しやすかったのではないでしょうか。
酒に強い人は麻酔が効きづらい?
看護師の方によると、笑気麻酔の効きやすさは個人差があるそうで、上に挙げたように気持ち良くなったり、中には施術中に眠ったりする人もいるといいます。
「お酒に弱い人の中には笑気を吸い出してすぐに効果が表れる人もいます。逆に、お酒に強い人の中には効きづらい人もいますね」
「お酒に強い人の中には効きづらい人がいる」とは、過去に大腸内視鏡の検査を受けるに当たり、麻酔の留意点として看護師の方が言っていたことでした。
わたしはやや強い方なので、麻酔が効きづらかった? 大腸内視鏡のときもなぜか麻酔が効かなくて「普通なら眠ってしまうはずなんだけど…」と医師も話していたし
複数の医療機関のホームページにも、「習慣的な飲酒が麻酔の効果に影響する」といった趣旨のことが書かれていましたが、具体的な根拠は示されていませんでした。
今のところ、お酒がどうこうというより「麻酔が効きづらい体質なのかもしれない」という想像に留めておいた方がよさそうですね。
笑気麻酔体験のまとめ
- 笑気麻酔の効果は個人差がある
- よく効く人もいれば効きが悪い人もいる
繰り返しますが、結論はシンプルにこうです。結局、やってみないとわからないのですよね。
気持ちが落ち着いていつものドキドキがなくなった。すごくよかった
そんな感想を抱く人がいる一方、残念ながらわたしのように効果がわかりづらい人もいるのが事実。
ただ、治療や施術をスムーズに受けられる有効な方法になる可能性があり、値段がすごく高いわけではないので、検討には値すると思います。
わたしは今度、シワ取りのボトックス注射を受けようと思うのでそのときにまた笑気麻酔を利用して、今回の体感との違いを検証する予定。
何か発見があったらまた書きますね。
医療ライターの庄部でした。
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※記事内の情報、考え、感情は書いた時点のものです。
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